「ゲームは悪影響だからやっちゃダメだ!」かつて、僕の幼少期には大人たちに当たり前のように飛び交っていた言葉です。
しかし、時代は変わり、今やゲームは「eスポーツ」としてスポーツ競技の一つとして認知されるようになりました。
先日、日本でも世界大会が開かれ賞金総額200万ドル(執筆時点のレートで約3億1千万)という規模で人気オンラインゲーム「エーペックスレジェンズ」の世界一を目指し、北米や欧州など各地から5日間にわたり熱戦を繰り広げられました。ギリシャチームおめでとうございます。
大人になり数年前から少しずつ反射神経が悪くなったなーなんて感覚が訪れてきておりますが、子どもとゲームを一緒にやると、その感覚が顕著に現れます。もうね、全くついていけない(笑)
eスポーツは、高い集中力、戦略性、反射神経が求められますが、どうしても子どもの運動指導を生業としている身としては身体や健康のことについて考えてしまうんですよね。
そこで本記事では、ゲームで才能を伸ばす可能性、そしてeスポーツとフィットネスが融合することで生まれる未来について考察し、綴りたいと思います。興味があれば是非読み進めてください。
eスポーツの現在地:ゲームはもう「遊び」ではない
僕ら大人はアップデートが出来ているのか?「ゲーム」と言えば娯楽の一つとして個人が楽しむものと考えられていました。
しかし、現在ではインターネットの普及と高度化したゲーム環境の発展により、世界中のプレイヤーがオンラインで接続し、競い合う場として急速に進化を遂げています。僕も子供と一緒に【FORT NITE】をプレイしますが、海外勢とプレイすることが多々あります。
現在地を知るためには、まずはeスポーツの歴史ついて振り返らなければいけません。歴史を大きく振り返ると、まず1970年代にアメリカで大学生を対象に行われたコンピュータゲームの大会が、その原型とされているようです。(eスポーツの歴史)
初めは小規模な要素の強いイベントでしたが、1980年代に入ってからもアーケードゲームの人気があり、企業主催の大会やギネス記録に挑戦するようなイベントが催され、1990年代にはインターネットが普及し始めたことをきっかけに上級プレイヤーのプレイに触れる機会が増え、家庭用PCを活用したオンライン対戦の環境が整ったことで、一気に盛り上がりを見せました。
2000年代になると、インターネット回線の高速化や動画配信技術の進歩に伴い、大会の様子を遠隔で見れる視聴環境が整います。世界中でプロリーグを設立したり、企業スポンサーが本格的に参入するきっかけとなることで、賞金の大幅な増額やチーム組織のプロ化がどんどん進みました。
2010年代に入ると、ライブストリーミングサービス(Twitchなど)の台頭でeスポーツの視聴人口が飛躍的に拡大し、人気タイトルのゲームは賞金総額が数億円を超える大イベントに成長していきました。
2020年代には、オリンピック競技化の可能性まで議論され、遂に2025年に第1回大会がサウジアラビアで開催されることが決定しました。
eスポーツ(ゲーム)をスポーツとして認めるのか否か、プレイヤーはアスリートなのか?と議論がなされていますが、オリンピック種目になったことで、より沢山の関心に触れ、議論の的になり、プレイヤーの社会的地位についても考えられるのではないでしょうか。
このように歴史を辿り、人気、参加者の数、高額賞金化などに伴い、プロチームや選手の育成、スポンサーシップの獲得、専門家による戦略分析など、「遊び」としての世界からビジネスとして、スポーツとしての領域に本格的に変わりました。
プロゲーマーと呼ばれるような人たちの日々のトレーニングはサッカーや陸上など伝統的なスポーツと同様に行われ、オリンピアン、プロスポーツ選手と同じくらい技術やメンタル向上に励んでいます。
日本の教育機関でも部活動や専門学校が設けられeスポーツを専門的に学ぶコースが設置され、プロを目指す学生から競技キャリアスキルを伸ばす学生まで多様な参加者を受け入れる仕組みが整いつつあります。
オンラインゲームは世界の人口増加、ネット環境インフラの整備、地球温暖化などによる環境変化からこの流れはもっと大きなムーブを起こすと考えられます。
オンラインゲームは自宅でもプレイ可能ですが、実際にはオリンピック、世界大会誘致やイベント開催が地域経済の活性化につながることも期待されるので、自治体や企業ももっと積極的に関わっていくべきです。
一方で新しい産業だからこそ生まれる課題も存在します。競技の適切な運営やプロ選手のキャリア、青少年へのゲーム教育など、競技だけでなく社会全体として取り組むべき課題がいくつも考えられます。
大会の開催スタイルや観戦文化が変化し多様化し、競技レベルがますます拡大している今、もうゲームが「遊び」から「競技」として生まれ変わったのではないでしょうか。
eスポーツ×フィットネス。子どもの可能性と危険性
ゲームのみならず、デジタルデバイス全般に言えることかもしれない。
パンデミックに見舞われた世界において、身体を動かす要素を取り入れたゲームのスタイルは新たに注目を浴びました。eスポーツの新たな可能性が期待されている一方で、やはり大人としては従来のパソコンやゲーム機を使ったゲームプレイによる、子どもの運動不足による身体的負担不安はぬぐえません。
Nintendo Switchを代表するように実際に身体を動かしながらフィットネスや模擬スポーツをプレイするゲームタイトルが登場し、エクササイズ感覚で運動やスポーツに取り組むことができる環境が徐々に整ってきました。
このおかげで、成長期の子どもにとっては柔軟性や運動神経を育むきっかけにもなり、ゲームを介して楽しく心身の発達を促進できるメリットも生まれました。
他にも面白く、魅力的な取り組みが幾つかあります。
先ほど挙げたeスポーツの指導、教育機関にはプロスポーツ選手も取り組むように、アイビジョントレーニング(眼球を動かす筋肉である眼筋を鍛えるトレーニング)が実施されたり、判断力や集中力などに影響を及ぼす脳について学びます。
休養、睡眠、栄養指導やフィジカルトレーニングも導入され、身体をリフレッシュさせる工夫を取り入れることもしています。
これらは僕らのようにフィットネスやスポーツの指導に関わる専門家だけでなく、医療機関との連携・スポーツ科学の知見を活用したプログラムが体系化されてきていることを意味します。
ゲームを遊ぶことと健康を維持バランス良く両立させる環境が徐々に進んできています。
しかし、運動に関わる仕事をしている人たちにライバル企業や競合他社は?なんて質問をしてみるとゲームやSNSの企業名を出し、敵対心を持つ人たちも少なくありません。
地球温暖化、移動の制約、他者との物理的距離懸念などからも、フィットネスやスポーツをゲームで行う流れがあり、上述した情報がまだまだ一部の人たちしかアクセスできていないからです。
子どもの発達段階では、特定の動作の繰り返しや、ヘッドセットや周辺機器を装着しながらの長時間プレイによる前傾姿勢などは、将来的な骨格のゆがみにつながる可能性もあります。
VRヘッドセットの場合は視覚と体の動きにズレが生じるため、乗り物酔いのような違和感や頭痛、めまいといった症状を経験している人たちもいます。実際に僕自身もVRではないですがマリオの3Ⅾシリーズやスプラトゥーンのようなゲームでさえも、このような症状を経験しています。
他にも、ヘッドセットやイヤホン類を高音量で使用し、聴覚への負荷が大きくなり、聴覚リスクの懸念も高まっています。
このように多面的に見ると限界、危険を払拭する取り組みもありますが、完全に補えているとも思えません。
この背景を考えると、eスポーツとフィットネスの融合はもっと進んでいくべきで、より幅広い世代に対しても注目と魅力を広げる必要があります。
競技であるがゆえに動作や機材の安全性、子どもの身体発達への影響といった検証は課題であり、ただの子どもの娯楽でしょ?と安易に考えず、ゲーム業界・運動業界・教育現場が協力し合って課題を整理していく必要があります。
今後さらに技術が進歩し、新たなゲームタイトル、ゲームスタイル、トレーニングメソッドが開発されることで、eスポーツが生み出す価値と役割は多様化していくと思います。
競技としての面白さと合わせて、健康かつ健全な身体発達をどのように実現していくかが、次のステップになるのではないでしょうか。
eスポーツで子どもの才能やスキルはどう伸びるのか
次に娯楽としての「ゲーム」が「eスポーツ」になることで「ゲームが上手くなる」だけでなく、子どもの才能やスキルがどう伸びる可能性があるのか考察していきます。
まずは、なんといってもゲーム内で刻々と変化する状況に対応しなければならないための、集中力や判断力でしょう。
相手の動きを正確に把握し、瞬間に最適な行動を選択する必要があるため、本質的に早い情報処理能力が自然に養われます。※このように考えると本当にスポーツのまんまですね。
次に、チーム戦を重視するタイトルのゲームです。冒頭に挙げたエーペックスレジェンズのようなゲームではチームでのコミュニケーション能力や協調性が大いに発揮されます。
オンラインでプレイするゲームの多くは文字や音声チャットを使って仲間と接する機会が多いです。正確に情報を共有しながら、自分の役割や得意分野を活かすことで、チーム全体として勝利を目指すという姿勢は、ゲーム、スポーツのみならず現実社会でも必要とされる素養を育む一助となります。
これは実際に僕自身も子どもたちとプレイすることで特に体感する部分です。1対1で相手を打ち負かすのが得意な子、救援サポートに回るのがうまい子、瞬時に戦略を練り立ちまわり方を考える子など、それぞれが自身の役割をチームで上手く活かしていることを感じます。
次に世界中のプレイヤーと対戦や協力することで、国際感覚や言語への興味を引き出すことが可能です。eスポーツの大会やコミュニティでは英語が共通言語として使われることが多いです。
海外のプレイヤーと直接交流する機会があるため、「実際に使う英語」を身につけるきっかけになる場合もまれではありません。
実際にチャットで英語でコミュニケーションをとる姿があります。子供に「これ?なんて言ってんの」なんて質問されても僕には分からないのでGoogle先生に助けてもらいます。(笑)
他にも配信プラットフォームの充実により、子ども自身がゲームをプレイするだけでなく、動画制作やライブ配信などの関連スキルを身につけるケースも増えています。
子どものころから、プログラミングや動画編集作業、企画力や表現力、視聴者とのコミュニケーション、視聴者のニーズの読み取り、問題解決方法などを学ぶことができます。
これらのスキルは将来どのキャリアを選択するにおいても応用できる普遍的なスキルと言えます。
ただし、実際に身体を動かすスポーツと違って身体的疲労を自覚しづらいeスポーツは長時間プレイ化しやすく、前章に書いたように健康のみならず、学業との両立も重要な課題となります。
またコミュニケーションスキルにおいては、大人にも言えることですがオンライン中心のコミュニケーションが増えている現代において、より重要視されてきているのが直接対面でのコミュニケーションスキルです。
これについてはやはり、オフラインの場を意図的に設け、対面交流ができる場所で「ゲームのプレイだけをする」のではなく、会話や雑談を楽しんだりする時間を作る必要があると感じます。
姿勢、視点、会話の間、リアクション(頷きや相づちなど)などの、「基本の型」は体験から学び、
ゲームのテクニックを習得するのと同じように「対面コミュニケーションにも基本の型がある」ことを知れると良いと思います。
考えてみると、eスポーツは子どもが好きなゲームを楽しみながら、
- 集中力・判断力・戦略性
- チームワーク・コミュニケーション能力
- 国際感覚・語学力
- デジタルリテラシー・クリエイティブスキル
- 自己管理能力
など、実社会でも通用する多面的な力を養う可能性があります。本人の興味と意欲を活かしながら、周囲の大人が健康面や学習面をしっかりサポートすれば、好きなことで才能を伸ばせる環境を作ることができるのではないでしょうか。
まとめ
eスポーツは真剣勝負だけでなく、様々な才能やスキルを伸ばす貴重なチャンスとなります。
ゲーム中に培われる集中力、判断力、戦略性、チームワーク、コミュニケーション能力、さらには国際感覚やデジタルリテラシーといった実社会でも使える能力は、子どもたちの成長のきっかけになります。
しかし、ゲームの長時間プレイが健康に与える影響や学業とのバランスを取ることも重要な課題です。これはゲーマーの社会的地位向上、フィットネスや医療機関、専門的知見の融合が進む必要があるでしょう。
以上を踏まえて、eスポーツは「ゲームが好き」という子どもの純粋な情熱を原動力にし、大切にしながらサポートしてあげることでスポーツや学業などと同様に健全な発達を促せます。
「好きなことに全力で取り組む」経験はその他と変わらずにプラスの方向に導けるのではないでしょうか。 大人としては、競技としての奥深さだけでなく成長期ならではのリスク管理も意識に置き、子どもが成長できる環境を整えるのが理想でしょう。


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